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『鋼鉄都市』を読んでみた感想
今回はアイザック・アシモフの作品『鋼鉄都市』について感想を書きます。この作品は1953年に発表され、50年以上も前の作品ですが、その魅力は色あせていません。評価としては90点を付けました。
未来の地球の物語
『鋼鉄都市』の舞台は未来の地球です。地球以外の星にも移民が進み、いくつもの宇宙国家が誕生しています。しかし、開拓を進めたはずの地球は都市を大きなドームに包み込み、人々はその閉じられた世界で生活しています。
主人公の刑事ベイリは、警視総監から宇宙都市で発生した宇宙人の殺人事件の犯人を突き止めるよう命じられます。その相棒として登場するのがR・ダニール、名前のRはロボットを意味します。ロボット嫌いのベイリと、宇宙都市最先端のロボットであるダニールが手を組み、事件解決に挑みます。
ロボットと未来の予測
今では当たり前の存在となったロボットですが、この本が書かれたのは第二次世界大戦直後の時代です。希望の未来を描いたアシモフの作品は、2024年の現代においても多くの実現した技術や、今後実現される可能性のある技術を予見している点が興味深いです。
本書は1953年に連載開始され、日本では同じ頃に手塚治虫の『鉄腕アトム』が執筆されました。日本とアメリカのロボットの将来像の違いにも注目したいところです。日本では『鉄腕アトム』から『ドラえもん』といったロボットが友達という流れが生まれ、アメリカでは『ブレードランナー』や『ターミネーター』のように敵対する存在として描かれることが多くなりました。その後、合同制作の『トランスフォーマー』では敵対しながらも友や戦友としての関係が描かれ、『AI』では家族としてのロボットが登場します。
鋼鉄都市と現代の関連性
『鋼鉄都市』の舞台となるニューヨークには、高速自動走路が登場します。これは、ポケモンの映画『裂空の訪問者デオキシス』のバトルシティの元ネタでもあります。
本書は、単独の作品としても非常に魅力的です。ロボットは人間の労働を奪い、居場所を奪う存在と考えられていたため、最初はロボットを拒否していたベイリ。しかし、捜査を進めるうちにダニールとのふれあいや、宇宙人との会話を通じて価値観が変わっていきます。現代におけるAIの受け入れを悩む私たちにも共感できる点です。
推理小説としての楽しさ
R・ダニールの非人間的なのになぜか人間味が感じられるやり取り、宇宙人の殺人犯を追う捜査と推理展開は、探偵小説や漫画が好きな人にもおすすめです。
事件現場の捜査、主人公に迫る謎の組織の影、追われる主人公、反撃を開始する展開、そして読み進めながら主人公と共に推理を進める読者の意表を突く犯人に結末。
名探偵コナンや金田一少年の事件簿が好きな人にもオススメできる推理小説。
現代への示唆
ロボットを受け入れ発展している宇宙都市の博士、ロボットを受け入れず閉じた地球都市の人々、ロボットに職を奪われた人々、そしてそれを見守る人々。このような状況を知りつつもロボットを地球に導入しようとする上司や、現代にも通じる価値観と変化が描かれています。
未来への想像力
現代ではペッパー君や初音ミク、ChatGPTのようなAIが続々と登場しています。もし本書のようなアンドロイドが現実になったらどう感じるのか、ぜひ一度『鋼鉄都市』を読んで感じてみてください。
続編のはだかの太陽は下記リンクより