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コンテナ物語』の感想
今回の書籍『コンテナ物語』の点数は75点です。
この本は、コンテナの流通によって世界がどのように変貌し、またそれが日本にどのような影響を与えたのかを知ることができます。しかし、本書のメインはアメリカを中心としたコンテナの発展であり、時系列が前後するため読みづらい部分があります。登場人物も多く、内容が膨大で、読むにはまとまった時間が必要です。そのため、内容の良さを理解しにくく、評価が少し低くなってしまいました。
本書の概要
『コンテナ物語』のメインストーリーは、マルコム・マクリーンがコンテナの運用方法を発明し、その実現に至るまでの苦労や、コンテナ流通が世界に劇的な変化をもたらした過程を描いています。しかし、こうした内容は、歴史やビジネスに詳しくない人には少し難解で、退屈に感じるかもしれません。
要約
要約すると、マクリーンは荷物を効率的に遠くへ運ぶ方法を模索し、最初はトラックで輸送、その後トラックごと船に乗せて輸送する方法を考案しました。しかし、トラックの荷台だけを取り外して船に積むことで、輸送コストを大幅に削減できることを発見します。これがコンテナ運用の始まりです。
しかし、当時の港湾労働者やギャング、労働組合はこの効率化に強い抵抗を示しました。さらに、既存の船会社同盟や鉄道会社同盟、政府の規制も大きな壁となり、マクリーンはこれらの困難に立ち向かいながら陸運会社、船会社、輸出入会社を立ち上げて成功を収めていきます。
日本への影響
本書では、日本におけるコンテナ流通の影響についても触れられています。多くの港町が繁栄し、その後衰退していく過程が描かれており、これは日本全体にも当てはまる問題を示唆しています。2024年現在の「失われた30年」とも言われる日本経済の停滞の一因として、コンテナ流通の影響が考えられるかもしれません。
コンテナと日本経済の関係
日本では昭和30年度(1955年度)から昭和47年度(1972年度)あたりまでを高度成長期、 1986年12月から1991年2月頃までの期間をバブル景気として成長期が存在しています。その高度成長期の末頃の70年代末から80年代にかけ、いち早くコンテナを輸出入に採用し、東京、横浜、神戸の港を整備しました。これが日本の輸出立国としての基盤を築いたのです。高度成長期の牽引役は鉄道網と高速道路の整備による物流の強化だったと考えられます。
しかし、日本の高速道路はコンテナを運ぶことに適しておらず、その整備の遅れが現在の停滞に繋がっている可能性があります。対照的に、コンテナ流通に適応して成長した中国は近年のGDP上昇と強く関連しています。
日本の課題と今後の展望
日本では高速道路や鉄道網の整備が進んでおらず、渋滞や交通の効率化が課題となっています。こうした問題を解決することで、日本全体の経済効果を高める可能性があります。
公共事業費の増加や高速道路の整備が進まなければ、今後10年、20年で日本はさらにGDPを落とすことが予想されます。しかし、AmazonやメルカリなどのEC市場の拡大が続くならば、現状を維持することは可能かもしれません。さらに、高速道路などの整備に力を入れれば、再び成長する可能性もあります。
また、工場勤務の経験がある人なら、次の例がすぐに理解できるでしょう。加工や組み立てを行う機械が故障すると、製品の生産が停滞し、それが売上の減少に直結します。逆に、機械の高速化が進めば、生産性が向上し、売上の増加に大きく貢献することも明らかです。
この視点で日本全体を見てみると、高速道路や鉄道網の整備が遅れていることが、経済全体に悪影響を及ぼしている可能性があります。2023年には、静岡県の知事がリニア新幹線の開通に反対を表明しましたが、これが人や物の物流を阻害し、日本全体の経済効果にどのような影響を与えているかは十分に議論されていません。
例えば、兵庫県では神戸市が明石との道路事業を延期したり、高速道路だけでなく一般道でも渋滞が常態化している状況があります。兵庫県内の三田から伊丹、西宮市から尼崎・神戸へ向かう道路や、神戸三宮付近から明石への道路などで、毎日のように渋滞が発生しています。大阪でも中央から京都方面や和歌山方面への道路で渋滞が起きており、渋滞を抜けるのに1時間以上かかることも珍しくありません。
このように、毎日何台もの車が渋滞で足止めされている状況では、物流の効率が低下し、人の移動が制約されることで、経済効果も限定的なものとなっています。
2024年には、企業単独での効率化が話題となっていますが、日本全体で見た場合の道路や交通インフラの効率化については、あまり議論されていません。日本が経済的に復活するためには、国全体での効率化が必要です。
高速道路などの物流インフラの効率化が話題となり、日本の復活への道が開かれることを祈りつつ、今回のまとめに入ります。
結論
『コンテナ物語』は、世界の物流革命に焦点を当てた一冊であり、コンテナがもたらした変化の重要性を理解するのに役立ちます。しかし、内容が難解であり、読みづらさが評価を下げる要因となっています。そのため、点数は75点としましたが、今後の日本経済を考える上で一読の価値がある本です。
捕捉情報
こちらのホームページより丁度バブル景気にある表でもバブル景気に停滞期との相関関係が見て取れます。
https://jpn.nec.com/manufacture/monozukuri/iot_mono/2022-05/02.html
こちらのホームページでも公共事業費の停滞によるGDPの停滞が示唆されています。
https://www.jcca.or.jp/files/achievement/annual_report/pdf/2021/wp2021_02_2-2.pdf
日本とは反対にコンテナ流通の主流に乗っている国として中国が存在しており、近年のGDP上昇との相関性もある。
https://www.mlit.go.jp/statistics/details/content/001517678.pdf
中国の高速道路とGDPの相関関係もある事が下記ホームページにて示唆されている。
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h16/hakusho/h17/html/g1013100.html