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ガニメデの優しい巨人
ジェイムズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」の続編である「ガニメデの優しい巨人」は、前作を読んでから本作に取り組むことを推奨します。しかし、前作を読んでいなくても十分に楽しめる作品です。
評価: 89点
前作:星を継ぐものは以下
https://siroineko.com/hositugumono/
あらすじ
木星の衛星ガニメデで発見された2500万年前の異星の宇宙船。その正体を明らかにするために、ハント博士とダンチェッカー教授を中心とした木星探査隊が調査を進めます。ところが、宇宙の一角から急速に接近してくる未確認物体が現れます。はるか昔に飛び立ったガニメアンの宇宙船が、相対論的時差のため現代に戻ってきたのです。
感想(ネタバレ含む)
前作「星を継ぐもの」は謎解きをメインとしたストーリーでしたが、今作では異星人とのファーストコンタクトを描いています。主人公は引き続きハント博士とダンチェッカー教授です。
物語は、2人が木星のガニメデでガニメアンの宇宙船を調査しているときに、謎の宇宙船が突然現れるところから始まります。宇宙船には、自律して考え話すAI「ゾラック」が搭載されており、ガニメアンたちが生活しています。地球側はゾラックと対話し、彼が英語を習得する様子に驚きつつ、ガニメアンとの交流はゾラックが通訳をこなすことで進んでいきます。
ガニメアンたちは、実験の失敗と宇宙船の故障により、光速で宇宙を旅することになったという過去を持っています。その実験とは、人工的に太陽を活性化させ、太陽系の温度を上昇させるという壮大なものでしたが、失敗に終わり、星が崩壊する危機から逃れるために旅立ったのです。
さらに、ガニメアンの母星がルナリアンと同じくミネルヴァであることが判明します。地球側からの情報により、ガニメアンたちは母星が消滅してしまったことを知り、意気消沈しますが、彼らとの交流は続きます。最終的に、ハント博士はミネルヴァの資料からガニメアンたちが移住したと考えられる星を特定し、ガニメアンは新たな希望を胸に旅立ちます。
物語の最後には、ガニメアンの宇宙船「シャピアロン号」が太陽系を飛び出し、ジャイアントスターへ向かうというメッセージが送られ、ジャイアントスターからもガニメアンの言葉で待っているというメッセージが届き未来への希望を感じさせる終わり方をしています。
考察
本作は、地球が一丸となり異星人と接触する際にどのような反応をするのかを、非常に丁寧に描いています。異星人との接触が平和的に進む様子は、1980年代の高度成長期という時代背景を反映しており、未来への楽観的な視点が強く表現されています。
2024年時点の映画では、異星人が地球にやってくると、話が通じないために地球が襲われるという展開が多く見られます。例えば、「インデペンデンス・デイ」に代表されるように、異星人が地球を侵略し、地球側がそれを撃退するというパターンです。
しかし、この作品では、地球人と異星人の接触が平和的に進みます。2016年の映画「メッセージ」と似た展開を持っており、もしかしたら「ガニメデの優しい巨人」が「メッセージ」に影響を与えた可能性もあります。
異星人との対話が進み、知識や文化の交流が深まる過程が描かれており、この平和的な交流が人類の明るい未来を象徴していると言えるでしょう。
まとめ
「ガニメデの優しい巨人」は、異星人とのファーストコンタクトをテーマに、理想的な出会いと交流を描いた素晴らしい作品です。異星人と言葉が通じない状態から始まり、少しずつ理解が進んでいく過程が丁寧に描かれています。また、前作の謎が少しずつ解明されることで、次作への期待感も高まります。
この作品は、前作と次作を楽しむための橋渡し的な役割も果たしており、異星人との交流の可能性を描いた傑作として、89点と評価しました。