13歳からの地政学
評価: 45点
「13歳からの地政学」は、高校生・中学生の兄妹が年齢不詳の男「カイゾク」と対話を通じて「地政学」を学ぶというストーリー仕立ての一冊です。7日間にわたって、地政学の基本的な考え方や世界の出来事がスラスラと学べるようになっています。
目次
あらすじ
1日目から7日目まで、次のようなテーマが展開されます。
- なぜドルは世界中で使われるのか? 世界の貿易の大半が海を経由しているため、海を支配するアメリカがドルを中心にした経済を握っているという説明です。
- 中国が南シナ海を欲しがる理由 中国が海を求める理由や軍事的な背景が解説されます。
- 領土争いと戦争の理由 中国が領土を拡大しようとする背景と、なぜ戦争が起こるのかを考えます。
- 王様が必要とされる理由 王制や政治の役割について語られます。
- アフリカの貧困の原因 アフリカがなぜ貧しいのか、その原因を歴史的背景と共に説明します。
- アメリカが地理的に有利な理由 アメリカの地理的条件が大国に成長する上でどれほど有利であったかを解説します。
- 地図の見方と未来の予測 世界地図の見方や温暖化の影響など、未来の地政学的な変化について触れられます。
覚えておきたいポイント
各章の最後にはまとめがあり、そこから主なポイントを抜粋すると次のようになります。
- 世界の貿易はほとんどが海を経由しており、アメリカがその海を支配しているためドルが世界通貨となっている。
- アメリカは自国通貨で貿易ができるため豊かである。
- 世界のデータも海底ケーブルを通じて送られており、海の支配は情報の支配にもつながる。
- 経済成長には人口と技術の伸びが影響している。
- 核兵器を保有するには、原子力潜水艦と海中から発射する能力、深くて安全な海が必要。
- 中国は深くて安全な海を求め、南シナ海を狙っている。
- 「遠交近攻」という、遠い国と仲良くして近くの脅威と対抗する戦略は、地政学の基本。
感想と評価
「13歳からの地政学」は、絵本として好奇心をかき立てる内容であり、地政学に初めて触れる読者には読みやすい構成です。しかし、内容に関しては一面的な見方が多く、他の視点や歴史的背景を考慮しないと、誤った認識につながる可能性もあります。
例えば、ドルが世界通貨となっている理由を「アメリカが海を支配しているから」と説明していますが、実際には戦後の国際的な金融体制やアメリカ経済の強さが背景にあります。また、アメリカが自国通貨で外国から物を買えるから豊かだとされていますが、アメリカも世界大恐慌や貿易戦争を経験しており、常に豊かであるとは限りません。
他の部分でも、ウクライナとロシアの戦争や、アフリカの貧困問題に対してもっと多角的な視点が必要です。単に「地政学の基礎を学ぶための本」として割り切ればいいのですが、この本を読むだけで全てを理解した気になると、偏った認識を持つ危険性もあります。
まとめ
「13歳からの地政学」は、地政学を考える基礎を提供してくれる一冊です。しかし、記載されている内容を鵜呑みにせず、多角的な視点を持つことが大切です。他の書籍や資料を参考にしながら、広い視野で地政学を学んでいくことが必要でしょう。そのため、知識の補完を怠らずに読み進めることが重要です。
評価は45点としました。