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サウンドオブフリーダム

サウンドオブフリーダム

点数は88点

公式より以下引用

児童誘拐、人身売買、性的虐待といった国際的性犯罪の数々。その市場規模は年間約1,500億ドルと言われている。本作は、それらの犠牲となった少年少女を救い出すために過酷なミッションに挑んだ実在の人物ティム・バラードの闘いを基にした衝撃の物語である

あらすじ

米国土安全保障省の捜査官ティムは、性犯罪組織に誘拐された少年少女を追跡捜査していた。上司から特別に捜査許可をもらった彼は事件の温床となっている南米コロンビアに単身潜入し、ワケアリの前科者、資金提供を申し出た資産家、さらに地元警察と手を組み、大規模なおとり作戦を計画する。やがてティムは一人の人間として尊い命を救うため、自らの命をかけた壮絶な闘いに挑んでいく

 

ネタバレを含みつつ書いていきます。

物語は南米のある家から始まります。少女が歌っているシーンで、彼女の才能が描かれ、オーディションに誘われます。少女と弟がそのオーディションに参加することになりますが、父親は同行できず、2人だけで送り出されます。父親が迎えに行った時、部屋は空っぽで、2人が誘拐されたことが明らかになります。この衝撃的な展開に、観客はすぐに引き込まれます。

次に場面はアメリカへ移り、刑事がある民家を見張っているシーンに変わります。彼はパソコンを操作する家主が違法サイトにアクセスするのを見張っており、決定的な瞬間に突撃し逮捕します。その押収されたパソコンには、見るに耐えない映像が保存されており、刑事は涙を流し、強い怒りを抱きます。この刑事の怒りと悲しみは観客にも強く伝わってきます。

刑事は囮捜査を開始し、人身売買に関与する男の行動を立証します。売られてきた少年を確保するシーンでは、観客は誘拐された弟であることに気づき、安堵します。さらに、父親との感動的な再会が描かれますが、少女はまだ助け出されていません。

父親が「娘のいないベッドを見るのがどれほど辛いか」と語るシーンでは、観客もその苦しみを共有し、刑事の使命感がさらに強まります。家族と過ごすティム刑事の食事風景では、家族愛の温かさが描かれ、彼は妻の励ましを受けて、少女を救うための決意を固めます。

刑事は特別な許可を得て、コロンビアへ向かいます。彼は元犯罪者や地元の刑事、資産家の協力を得て、島を買い、人身売買組織を狙った囮捜査を実行します。しかし、救出された50人の子供たちの中に少女の姿はありません。妻の言葉を胸に、刑事は自分の身分を捨て、さらに危険な道を進むことを決意します。

少女が売られた場所は、武装した反政府組織が支配する危険地帯で、命の保証がない中、刑事は川を渡り、ついに少女を発見します。この救出シーンは、緊張感が高まり、観客を引き込みます。少女を助け出し、父親と再会させるシーンでは、感動が最高潮に達し、涙を誘います。

最後に、刑事はその後も犯罪者を逮捕し、子供たちを救い続ける活動を続けていることが語られ、物語は幕を閉じます。

 

この作品は、子供たちが誘拐され、奴隷のように働かされている現状を描いたドキュメンタリー映画です。現代の「奴隷解放運動」として制作されていますが、皮肉なことに、その解放運動を行っているのも、奴隷のように扱っている消費者もアメリカ人であると、映画は告白しているようにも見えます。

作中では、親として「こんなことは許せるのか?」と共感せざるを得ない場面が何度も描かれており、メッセージ性の強い作品だと感じられます。

主人公の刑事ティムは、アメリカのヒーローであるバットマンを彷彿とさせる行動を取ります。バットマンは、親を害された復讐から、法では裁けない犯罪者を自力で罰するヒーローです。ティムは、自分の娘が危険にさらされることを想像し、法の力だけでは対処できない問題に立ち向かうため、自らの正義を実行していきます。違いは、ティムの行動は罪悪感からの「心の贖罪」でもある点です。

アメリカ社会の現状についても考えさせられる部分があります。例えば、『ドクタースリープ』という映画では、主人公の少女が危険を感じたとき、助けを求める男性が周囲の目を非常に気にしているシーンが描かれます。これは、アメリカ社会での児童虐待や性犯罪に対する厳しい視線を表しています。また、法律を守らない人が増えた背景に過去に可決された禁酒法が問題点としてあります。禁酒法とは酒を飲むことを禁止し飲んでしまうと罰がある法律でしたが、結果的に人々は闇酒を求めるようになり、法律を厳しくするだけでは問題が解決されなかったことを示しています。

では、どうすれば解決できるのか?『日本沈没』という小説では、日本が沈没して世界中に日本の避難民が広がるという設定で、移住先での発展と対照的に、地元の住民が貧困に苦しんでいる様子が描かれています。これは『サウンド・オブ・フリーダム』で描かれる子供たちを誘拐して稼ぐ人々と共通するテーマです。貧しい人は真面目に法律を守り働く事よりも、犯罪でも人から物を奪う事が優先されてしまう。そこで日本沈没の物語では根本的な解決策として、現地の人々を豊かにすること、教育を提供して自立を促すことなどが必要と問題解決策が提示されていました。ですが、映画サウンドオブフリーダムではその解決策が提示されていません。

刑事であるティムだからこそ犯罪者を逮捕する事に固執し、その結果としてさらわれた子供が救出されている良い点も間違いはありません。ですが、根本的に誘拐をする必要がなくなるような問題解決には至っていない点にも注意が必要です。

法律を守る刑事ですら法律を守らない選択をするアメリカの社会

一つ間違い正義を貫く事で暴走を進めると、自分の正義のためならば世界の法律やルールを守らないイスラム国と同じようになってしまう。

正義とは何か、法律とは何か、考えていきたいですね。

まとめると、この映画はバットマンのようなヒーローが立ち上がり、法では裁けない犯罪に立ち向かい、被害者を救うという内容で楽しめます。しかし、単に感動するだけで終わるのではなく、なぜアメリカでこうした犯罪が増え続けているのか、法律が守られにくい風土、そして法律に背いてまで犯罪に立ち向かう刑事の姿に疑問を持つべきです。SDGsで掲げられている「貧困をなくす」という視点も大切であり、抜本的な解決策を考えることが必要です。

スーパーヒーローの活躍に止まらず、より深く考えるべき作品だと言えます。そのため、点数は88点としました。

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