映画

『幻影の覇者ゾロアーク』

『幻影の覇者ゾロアーク』

評価:85点


「ポケットモンスター」シリーズは1996年にゲームボーイ専用ソフトとして誕生し、瞬く間に世界中で大人気となりました。TVアニメが1997年にスタートし、1998年には初の映画『ミュウツーの逆襲』が公開されました。今回紹介するのは、2010年7月10日に公開された映画第13作目『幻影の覇者ゾロアーク』です。この映画が公開された同時期には以下のゲームが発売されています。

  • 9月18日:ポケモンブラック・ホワイト
  • 9月12日:ニンテンドーDSi レシラム・ゼクロムエディション

興行成績:41.6億円


目次

あらすじ(ネタバレを含みます)

サトシ、タケシ、ヒカリは旅の途中、ポケモンの「ゾロア」が襲われているところに遭遇し、助けに向かいます。ゾロアは「マァ」を助けに行くと言い、サトシたちとともにクラウンシティへ向かいます。

クラウンシティに到着すると、ゾロアークがライコウ、エンテイ、スイクンとともに暴れ回っている様子が目に入ります。実は、このゾロアークはゾロアが「マァ」と呼んでいた存在です。新聞記者クルトと出会ったサトシたちは、街で暴れるゾロアークを探しに行きますが、途中でコーダイの罠にはまり捕らわれてしまいます。しかし、クルトの仲間リオの助けもあって脱出に成功し、ライコウ、エンテイ、スイクンの姿はゾロアークが作り出した「幻影」であったことがわかります。

コーダイは過去にクラウンシティでセレビィの「時空の穴」を利用して未来を見る力を手に入れましたが、その代償としてクラウンシティの緑が枯れてしまいました。そして、今またセレビィが現れ、コーダイは力を再び得ようと狙います。コーダイはゾロアークやサトシたちを利用して時空の穴の場所を探し当て、力を得る機会を狙っています。

街で暴れるゾロアークには、本物のライコウ、スイクン、エンテイが対峙し、激しい対立が起こります。しかし、街の人々の協力により、誤解が解け、ライコウたちとも和解が成立します。サトシたちはセレビィを助け、時空の穴に送り返そうとする一方、コーダイも予知能力を強化しようと時空の穴を目指して競争が始まります。

サトシたちはコーダイに先を越されてしまい、コーダイは時空の穴に触れて勝利を確信します。しかし、実際にはゾロアークが見せた幻影に惑わされていただけであり、その瞬間を記録した証拠がもとで、コーダイは最終的に逮捕されます。

物語の最後には、サトシたちが故郷へ帰るゾロアとゾロアークを見送るシーンで幕を閉じ、物語はハッピーエンドを迎えます。


作品のテーマと考察

この物語の主人公は、ゾロアとその親であるゾロアーク、そして予知能力を持つコーダイです。

コーダイは予知能力を手に入れているのに、どうしてサトシたちの邪魔を排除しきれずに敗北したのか?

「ドラえもん」では、のび太が未来の結婚相手を知り、未来を変えたいと願って成功する物語があります。同様に、コーダイも未来を知ることで行動しています。実際に物語では、彼が予知能力を利用して地位や名声を手に入れた過去の成功が語られています。一度は成功を収めたものの、その先で彼は「成功し続ける」という過信に囚われてしまいました。

予知能力とそのリスク

2016年に公開された映画『メッセージ』も別の角度からこのテーマを描いています。この映画では、地球外生命体とコンタクトを取る物語が進行する中で、主人公に予知能力が目覚め、未来の悲しい結末を知ることになります。主人公は未来に子供が死ぬ運命が見えていますが、それでもその未来を変えず、今の危機を回避する選択をします。「未来を知る」ということが必ずしも喜ばしいことばかりでない点が描かれているのです。

コーダイもまた、未来を知ることで一度は成功しましたが、次第にその力に依存しすぎ、成功への執着が彼を破滅の道へと導いてしまったのです。未来を知ることで得られるのが成功でも失敗でも、その結果を受け入れ、行動すべきかは結果を迎える時までわかりません。

本当に未来を知ることは素晴らしいことなのでしょうか?

短期的な成功のために未来を知り、その先に破滅が待っているかもしれないとしたら、それでも知る価値があるのでしょうか。コーダイの結末は、その問いに対する一つの答えとして描かれています。

親子の絆と自己犠牲

ゾロアとゾロアークは、ポケモン映画でよく描かれる親子の関係を象徴しています。

今回の物語では、親であるゾロアークが子供のために、子供であるゾロアが親のために奮闘する姿が描かれています。ゾロアークはコーダイにゾロアを人質に取られ、彼の指示に従わざるを得ません。ゾロアは一度逃げ出しますが、ゾロアークに無事であることを知らせ、助けるために奔走します。

お互いが相手のために必死に行動する姿は、美しく感動的です。

また、ゾロアークは監督の分身とも考えられます。コーダイに命令され、幻の伝説ポケモンを見せるゾロアークの姿は、監督が社長の指示でポケモン映画を制作し、子供たちに「ポケモンの世界」という幻を見せているようにも映ります。


まとめ

今作では、ゾロアとゾロアークの強い親子愛が描かれ、ライコウ・エンテイ・スイクンと対峙し、彼らを翻弄する姿が伝説のポケモンと並ぶほどの迫力を持っています。このことから、ゾロアとゾロアークはタイトルの通りの重要キャラクターとして人気を博しています。また、予知能力を持つコーダイはその能力に溺れ、未来を知ることが持つリスクや限界をも暗示しています。これは、能力主義社会の危険性も象徴していると言えるでしょう。

点数は85点としています。

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