アルセウス 超克の時空へ
評価:88点
目次
あらすじ
「ポケットモンスター」シリーズは1996年にゲームボーイ専用ソフトとして誕生し、瞬く間に世界中で大人気となりました。TVアニメが1997年にスタートし、1998年には初の映画『ミュウツーの逆襲』が公開されました。今回紹介するのは、2009年7月18日に公開された映画第12作目『アルセウス 超克の時空へ』です。
この映画が公開された同時期には以下のゲームが発売されています:
- 6月16日:ポケモン不思議のダンジョン 空の探検隊
- 9月12日:ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー
興行成績:46.7億円
物語の概要(ネタバレを含みます)
自然に囲まれた町・ミチーナを訪れたサトシ、タケシ、ヒカリの3人は、不思議な嵐に巻き込まれます。そこに現れた遺跡の守り人・シーナが、ディアルガを呼び出して3人を助けます。
ディアルガの助けがあったものの、前作同様にギラティナがディアルガを襲撃します。さらにパルキアも駆けつけますが、シーナの説得によってギラティナもディアルガも争いをやめます。
その後、シーナはピカチュウを見て、「言い伝えの雷使いか」と言い、前作・前々作で発生した時空の歪みの原因がアルセウスにあることを話し始めます。
かつて、ミチーナは不毛の大地でしたが、そこにアルセウスが現れ、ダモスという男に「命の宝玉」を授けました。この宝玉にはアルセウスの力が宿っており、不毛の土地を豊かな大地に変えたのです。しかし、ダモスはアルセウスを裏切り、宝玉を返す代わりに奪おうとしました。この裏切りに激怒したアルセウスは、ダモスを攻撃。しかし、ダモスも応戦し、アルセウスは傷を負って別の空間へ去っていきました。
命の宝玉はアルセウスの力の一部であり、回復には長い時間が必要でした。回復を終えたアルセウスが再び宝玉を取り戻しに戻ってくることで、時空に異常が発生し、それがディアルガ、パルキア、ギラティナの異変の原因だったのです。
その後、アルセウスが現れ、シーナに「命の宝玉を返せ」と要求します。シーナはダモスの子孫として宝玉を返そうとしますが、アルセウスはそれが偽物だと見破り、激怒します。絶望するシーナに対して、アルセウスは攻撃を開始しますが、ディアルガ、パルキア、ギラティナが仲裁に入ります。ディアルガは時の力を使い、シーナとサトシたちを過去へと送り込みます。
過去に送られたサトシたちは、ダモスがアルセウスに宝玉を返そうとする出来事が起こる日へと到着します。しかし、事態は思わしくなく、さらに過去へと移動します。そこで彼らはギシンという男に捕まり、サトシたちは分断されます。シーナはギシンに騙され、命の宝玉が入っていると見せかけた杖を預けられます。
サトシたちは牢屋でダモスと出会い、アルセウスとの友情があったこと、ギシンこそが真の裏切り者であることが明らかになります。サトシたちはダモスと共にギシンを止めるため、牢屋を脱出します。
ついに、アルセウスが命の宝玉を返却してもらうために現れますが、シーナが返そうとするも杖には命の宝玉が入っておらず、アルセウスをさらに怒らせてしまいます。アルセウスは激怒した時、ギシンが率いるポケモン軍団がアルセウスに攻撃を仕掛けます。さらに、熱した銀をアルセウスにかぶせて封じ込めようとしますが、駆けつけたダモスがアルセウスとの心の絆を通じて誤解を解き、ついに本物の命の宝玉を返すことに成功します。
これにより過去が少し修正され、現代でもアルセウスの怒りは沈静化し、平和が訪れます。ディアルガ、パルキア、ギラティナとも和解し、全員がそれぞれの空間へと帰還します。
そして、サトシたちは再び新たな旅を続けていくのです。
タイムトラベルの展開
まず、アルセウスとダモスが出会い友情の証として命の宝玉をアルセウスがダモスへ渡す。
次にダモスが命の宝玉を返す時に問題がありアルセウスの怒りで被害が発生
シーナの時代にアルセウスが戻ってきて命の宝玉を返そうとするも失敗
シーナがダモスの居る時代へ行く。
ダモスがアルセウスに宝玉を偽物を渡しアルセウスに攻撃する。その時アルセウスの反撃でダモスが高い場所から落下する事を目撃。
さらに1日前へ行くと事でダモスと会話をしアルセウス事件の真相に辿り着ける。
この流れではサトシとピカチュウが何故予言されていたのかが不明である。
ダモスが落下し助かっていないならば何故命の宝玉の偽物が現代に伝わっているのかが謎とタイムトラベルの展開には欠点がある。
SFとファンタジーが交錯するストーリー
今作はポケモン映画初の3部作として、前作・前々作で描かれたディアルガとパルキアの争いの根本的な原因が明かされます。また、時間を行き来するタイムトラベル要素も取り入れられていますが、過去と現在で生じる矛盾をタイムスリップで解消するという、SFでは定番の要素がファンタジーとして描かれています。
特に興味深いのは、過去を変えることで未来に影響が出るというテーマです。現代で進行するアルセウスとディアルガ、パルキア、ギラティナの戦いと、過去でのサトシたちの行動が並行して進む展開は、ドラえもん映画『のび太の鉄人兵団』にも通じる構造を持っています。
作品のテーマと背景
本作で描かれる過去のシーンは、中世のキリスト教が農業技術を広めていた時代をモデルにしており、アルセウスの神殿が崖にあることは教会としての象徴です。
『2001年宇宙の旅』というSF映画があります。この映画では、モノリスによって猿が知恵を得て、やがて人間へと進化していきます。さらに、モノリスはキリスト教の十字架を象徴しているとも考えられています。この点から、モノリスが力の源でありモノリスを集めて命の宝玉として人に与え知恵を授けたアルセウスは神様である事が共通点としてあります。
それは、アルセウスが世界を創造した神のようなポケモンとして語られていることから明らかです。『2001年宇宙の旅』では、モノリスによって猿から人類への進化が描かれ、最終的に木星のモノリスに導かれて神に出会うという流れです。同様に、本作のポケモンでも、過去に命の宝玉(モノリス)によって人々は豊かな恵みを得て、現代から神(アルセウス)に会うために過去へと旅します。
『2001年宇宙の旅』では、最初に猿がモノリスに触れ、その後に人類が触れる場面がありますが、ポケモンではダモスが猿に相当し、その子孫であるシーナが人間として描かれています。
このような共通点から監督は『2001年宇宙の旅』を、ポケモンを通じて表現しようとしたのではないかと考えられます。
まとめ
『アルセウス 超克の時空へ』は、ポケモン映画として初めての3部作の完結編であり、単体でも楽しめる作品に仕上がっています。ポケモンと心を通わせるシーナや、過去と未来の繋がりが描かれた物語は、ファンタジーとして見ても楽しめます。
ただし、SF的な時間の整合性はやや破綻しており、SF作品として捉えると少し不満が残るかもしれません。それでも、アルセウスやディアルガ、パルキア、ギラティナといった伝説ポケモンが登場し、見応えのある展開が繰り広げられるため、ポケモンファンなら楽しめること間違いなしです。
評価:88点